12月10日に被爆者団体の全国組織「日本原水爆被害者団体協議会(被団協)」がノーベル平和賞を受賞しました。日本人がノーベル賞を受賞したこと、それ自体は大変お目出たいことですが、私は現実主義者なので素直に喜べませんでした。
理由は幾つかあります。1つは、核兵器を保有し核恫喝を平然と行うヤクザ国家(ロシア、中共、北鮮)に日本は囲まれていますが、核抑止力が無い状況で、幾ら核兵器の悲惨さや核廃絶を訴えても現実的には何も抑止力にならない、むしろ核抑止力を得る努力の足を引っ張ることになりかねないからです。
核廃絶は理想ですが、核保有国が核を手放すことは絶対にあり得ません。自国の安全保障を考えた時にわざわざ有効な核抑止力を放棄するバカはいません。北鮮が国民を飢えさせても核開発に血道をあげるのは核兵器が最も効果的な核抑止力になるからです。ウクライナがロシアにクリミア半島を侵略された(2014年)のも、今まさにウクライナ本土を侵略されているのも、以前保有していた核兵器を放棄したためです(注1)。もしウクライナが核を放棄しなかったら、ロシアは核報復を恐れ侵略しなかっただろうと言われています。 注1:ソ連崩壊後、ソ連がそれまでウクライナ等に配備していた核兵器の取り扱いについて関係国で話し合われました。その結果、1994年12月5日、ハンガリーの首都ブダペストで行われた式典でウクライナは、ベラルーシやカザフスタンと共に、アメリカ、イギリス、フランス、中国、そしてロシアからの安全保障の保証と引き換えに核兵器を放棄しました。いわゆる「ブダペスト合意」という口約束です。
幸いに、というか当然のことながら、日本政府は、「核廃絶を目指す」としつつ、「核兵器禁止条約」には参加していません。日米安保条約に基づくアメリカの核の傘(注2)に依存して核抑止力を保持している日本が、仮に核兵器禁止条約に参加したら、アメリカの核抑止力を否定することになり、日本は無防備になるからです。しかし、このアメリカの核の傘(拡大抑止)もあてになりません。仮に日本が核攻撃を受けた場合、アメリカが核反撃をするとしていますが、本当にアメリカが自国に核報復されるリスクを冒してまで核反撃をするかというと、多分そんな事はしません。 最善の安全保障策は、日本も核保有する、或いはアメリカの核兵器を借りる(核シェアリング)ということになりますが、ノーベル平和賞を受賞した喜びに浸るだけでなく、現実の核戦争防止(抑止)の方策についても議論してほしいと切に願っています。日本は既に2発も核爆弾を落とされていますが、3発目を食らう訳にはいきません。 注2:最近は「核の傘」という言葉の代わりに「拡大抑止」という言葉が使われています。通常兵器による抑止(防衛)だけでなく核兵器による抑止(防衛)まで拡大して、広く抑止力をアメリカが日本に提供するとの意味です。
2つ目の理由は、ノーベル平和賞の受賞が独り歩きして、核兵器を持たないことが平和につながるのだという、一種の宗教めいた思想が蔓延することを恐れるからです。日本には憲法9条を保持していれば戦争にならないのだという、憲法9条信者がいます。それを煽る一部の政党・政治勢力は、そんなことを真剣に考えている訳でなく、単に日本の防衛力を弱体化させ外国勢力の侵略を容易にする環境を醸成することを狙っています。しかし、善良で平和を重んじる一部の日本人には「憲法9条=平和」というシンプルな思考が刺さり、まるで宗教のように、9条を拝んでいれば平和が続くと思い込まされています。同じことが、核廃絶=平和という、新たな宗教が蔓延することに繋がりかねないと懸念するのです。
3つ目はノーベル平和賞のうさん臭さです。私は「ノーベル賞」はすばらしいと思いますが、平和賞には懐疑的です。2009年にオバマ米大統領(当時)がノーベル平和賞を受賞しました。ノーベル賞委員会が、「核兵器のない世界」実現への姿勢や国際協調主義、気候変動問題への取り組みなどを「世界の人々により良い未来への希望を与えた」と評価したためです。しかし、その後オバマは何もしませんでした。核の無い世界を実現しようという一片の演説をしただけで、アメリカの大統領が言うのだから本当にそんな世界が訪れるのだと世界中の人が錯覚し受賞に至りましたが、結局何もしませんでした。むしろ核保有国は増え、ロシアは中距離核戦力を増強し、中共も核弾頭を増強しています。だから平和賞など現実の世界平和のためには何も役に立たない、うさん臭いと思うのです(極論かもしれませんが・・・)。
写真はノルウェーの首都オスロ市街



コメント
真にご立派な信念と哲学に基づかれた崇高なお考えに、ただただ、感服致しております。大兄のお心の内の核心に魂も揺さぶられております。
小生も全く同感です。益々のご活躍をお祈り致しております。
蓬田様
私の拙い記事にお褒めのお言葉を頂き恐縮しています。
蓬田さんは私と同じ自衛官出身だから、核問題についての私の考えを理解して頂けるのかと思います。
何年も前に、利府町では「非核平和宣言の町」という議会決議をしております。私は全くのナンセンスだと考えます。
いつかその議会決議の廃止決議をしたいと真面目に考えております。
浅川紀明