トランプのモンロー主義傾斜と日本・台湾防衛 

国への思い

 昨年12月に米国トランプ政権が、「国家安全保障戦略(NSS)」を公表し、米国は西半球における覇権確立を目指す旨が明らかになりました。言い換えれば、欧州の事は欧州が責任を持て、アジアの事はアジアの国が責任を持て、俺は知らん!!という態度です。かつて世界の警察官としての役割を果たしていた米国はもはや存在しません。このNSSを具現化したのが、米国の裏庭にあたるベネズエラに中露の利権や存在は許さないというベネズエラへの急襲であり、領土の占領こそ無かったものの、マドロ大統領を拘束し、親米政権への移行を強制しました。

 心配なのは、中共の台湾侵攻を米国が許容するという誤ったメッセージになるのではということです。私がそんな心配をしていたら、本日の読売新聞に経済学者の竹森俊平氏が「グローバルエコノミー 竹中俊平の世界潮流」という特集で興味深いことを書いてくれました。要点を抜粋的に紹介します。(抜粋的と言っても多少長文になりますが、お付き合いください。)

①トランプ氏は第1次トランプ政権の2019年春、ロシアが援助するベネズエラのマドロ氏の代わりに親米派のグアイド氏をベネズエラ大統領にする画策を図っていた。(このことは私も知りませんでした。)

②その頃、露はベネズエラとウクライナの奇妙な交換を要望・提案した。「アメリカがモンロー主義に従い、露を米国の裏庭から追放したいことは承知だ。こちらの事情も同じ。君たちは露の裏庭のウクライナに踏み込んでいるのだ(だからウクライナに介入するな、そこは露の裏庭だ)

③昨年12月のトランプ政権の「国家安全保障戦略(NSS)」はモンロー主義を提唱した。曰く「長年の忘却の後、米国はふたたびモンロー宣言を主張し、実行することにより西半球における米国の主導権を確立し、米国の安全と地域内すべての重要地点へのアクセスを確保する。われわれは西半球外からの 闖入
ちんにゅう
 者が軍事的脅威となったり、戦略的重要資源を獲得したりすることを阻止する」

このNSSに基づき、米国は世界最大の石油埋蔵量を持つベネズエラへの中露の排除に動いた。ベネズエラ産石油の8割を購入する中共の特別代表は、拘束の直前までマドロ大統領と協議し「中国とベネズエラは戦略パートナー」と語っていたが、その鼻先での米軍の電撃作戦には、中共に軍事力の差を見せつける狙いもうかがえる。

そうすると、露、中はベネズエラからの追放の代償に、それぞれの裏庭(ウクライナ、台湾)を確保できるはずだが、米国はそれを認めるのか?という疑問が湧く。

ウクライナ和平交渉での米国の態度からして露に裏庭支配権を認める気配は見える。しかし一方でNSSは、アジアの経済成長能力を称賛し、この地域で米国が特権を確保する必要を説く防衛面では国際海運の要衝で、半導体生産の拠点の台湾を特筆し、強力な軍事力の配備でその現状変更を阻止するとし、中共の裏庭支配権を否定する。

⑦軍事紛争の危険が一番高い台湾は強い立場にある。しかし人口2300万の台湾の世界経済における存在感は圧倒的だ。1987年に設立されたTSMCは、世界経済に不可欠な産業を台湾に生み出すために台湾当局と民間企業の出資で設立された。米国のエヌビディアとTSMCの間には、前者が設計、後者が製造に特化する、切っても切れない協業関係が存在するため、エヌビディアの躍進はそのままTSMCと台湾の存在価値を高める。先端半導体の生産シェアで台湾は圧倒的だ。

NSSがアジア防衛で米国が目指すべき根拠を「経済成長能力」とする以上、米軍の協力なくては自国の防衛が成り立たないアジアの国と地域、とくに日本には(台湾のように)世界経済の要と評価される経済力が必要となる。

 要するに、竹中氏は、台湾や日本が経済力を高め、米国がその経済成長に関わり、大きな経済的利益、特権を有する限り米国は中共の覇権阻止に動くという考えです。納得できる点が多く、少し安心した次第です。

◆モンロー主義(Monroe Doctrine)= 1823年に当時のモンロー大統領が表明した米国外交の基本方針。もともと米欧間の相互不干渉を柱とする孤立主義の外交政策だったが、後に拡大解釈され、軍事力を背景に欧州列強の干渉は排除しつつ米国による中南米の権益確保を推進する根拠となった。トランプ大統領は自身の名前のドナルドとモンロー主義を掛け合わせた造語「ドンロー主義」に基づき、勢力圏とみなす西半球の支配強化を目指している。

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