批判殺到で異例の方針転換も、外国人受け入れ拡大の流れは継続
先日、独立行政法人国際協力機構(JICA)が推進していた「アフリカホームタウン事業」が、SNS上での批判の高まりを受けて撤回されました。この事業は国内4つの自治体をアフリカ各国のホームタウンに認定し(注)、交流を強化する計画でしたが、移民促進策との批判が殺到し、異例の方針転換となったもの。しかし、この撤回劇の背後には、より大きな外国人受け入れ政策の枠組みが存在しているのです。 (注):愛媛県今治市:モザンビーク、山形県長井市:タンザニア、千葉県木更津市:ナイジェリア、新潟県三条市:ガーナ
JICAの田中明彦理事長は記者会見で、誤解に基づく反応が広がり、自治体に過大な負担が生じたとして事業撤回を発表しました。同時に、JICAとしては移民を促進する取り組みを行ってきていないし、今後も行う考えはないと強調しました。しかし、この発言と実際の政策動向には大きな乖離があります。
政府の「移民ではない」論理の矛盾
政府は一貫して、日本は移民政策を取っていないという立場を維持しています。この論理によれば、日本に住む外国人の数がこの10年で1.7倍に増加したのは、あくまで結果であり、特定の目標に向かって計画的に外国人を受け入れる移民政策とは異なるとしています。
しかし、この定義の問題は実態を隠蔽しています。技能実習制度を例に取ると、制度上は技能移転が目的とされていますが、皆さんご承知のように、実際には日本の人手不足対策として機能しています。過去5年間で4万人の技能実習生が失踪し、そのうち約1万人が所在不明となっている現実は、制度の建前と実態の乖離を如実に示しているのではないでしょうか。
所在不明となった外国人技能実習生の多くは不法就労や犯罪に関与し、そのまま日本で生活を続けています。これは事実上の移民現象であり、政府の定義がいかに現実と乖離しているかを物語っています。
JICAの真の事業内容が示す移民促進の実態
JICAが移民政策を取っていないという主張に反して、同機構のホームページには「外国人材受け入れ・多文化共生」が主要事業の一つとして明記されています。難しい表現が並んでいますが、労働者の海外送出促進による各国の経済発展への貢献と移住労働者の課題解決、そして日本での適切な労働者受け入れの取り組みを推進するとされています。
さらに注目すべきは、JICAが今年1月に実施した競争入札の内容です。「アフリカ地域、日本の地方部との連携によるアフリカ人材受け入れ育成のための情報収集・確認調査」という事業の仕様書には、より具体的な政策意図が記載されています。
仕様書によると、「日本の少子高齢化問題において将来の労働力不足が懸念されており、特に地方部における労働力不足は深刻化している。JICA緒方研究所の調査研究では、外国人労働者の受け入れ必要人数は2040年には688万人という推計も示されている。欧米諸国や韓国、台湾等でも同様の労働力不足課題を抱える中、国際的な人材獲得競争が激化しており、外国人人材から日本が選ばれる国となるための環境整備が急務」とされています。
ホームタウン事業の真の狙いと今後の展開
撤回されたホームタウン事業は、こうした大きな政策枠組みの中の一つのパイロット事業として位置づけられていました。人手不足に悩む自治体と4つのアフリカ諸国を結びつけ、インターンという名目で人材を受け入れ、その中で生じる課題や成功要因を検証し、将来的な本格的受け入れにつなげる試行錯誤の第一歩だったと考えられます。
しかし、単なるインターンシップで終わらせるつもりがないことは、JICAの2019年度以降の年度経営戦略からも明らかです。同戦略では外国人材受け入れ・多文化共生への貢献を掲げ、開発途上地域と日本との人材還流促進や日本国内における外国人材の適正な受け入れ、地域における多文化共生社会構築支援に取り組むとしています。(この多文化共生という言葉も胡散臭いですね!)
産業人材が不足する長井市においては、タンザニアから将来産業人材になりうる人材を受け入れることで、同市の抱える人材不足に貢献できる可能性について認識を共有したという記録も残されています。これらの事実は、ホームタウン事業が単発の交流事業ではなく、長期的な人材受け入れ戦略の一環であったことを示しているのです。
メディアの楽観論と現実のギャップ
一部のメディアでは、外国人受け入れ問題について楽観的な見解も示されています。外国人の同化が成功すれば問題ないという論調もありますが、これは現実を十分に理解していない議論と言わざるを得ません。
確かに、長年日本に住み、日本社会に完全に溶け込んだ外国人の例(TBSの某番組ではデープ・スペクターの例を取り上げていました)は存在します。しかし、すべての外国人がそのような同化を実現できるわけではないのです。特に文化的背景が大きく異なるアフリカ諸国出身者の場合、言語、宗教、生活習慣、価値観などの違いから、同化には相当な困難が伴うことが予想されます。村井宮城県知事が推進しようとしているインドネシアからのイスラム系労働者の受け入れも、その同化は困難です。しばしば言われる「郷に入りては郷に従え」という教えは価値観・宗教観を同じくする日本人にのみに通ずるもので、中華系・イスラム系には馬の耳に念仏なのです。
世界各国で移民問題が深刻な社会問題となっているのは、まさにこの同化の困難さが原因です。一度大規模な移民受け入れが始まり、社会問題が顕在化してからでは、政策の修正は極めて困難。そのため、現段階での慎重な検討と適切な規制が必要なのです。
超党派議連の動きと政治的思惑
外国人受け入れ問題への関心の高まりを受けて、今年6月には「国家の将来構想から出入国在留管理を考える議員連盟」が設立されました。この超党派議連には自民、立民、維新、国民、公明の各党議員が参加し、鈴木健介法相も講演を行っています。
鈴木法相は講演で、国民の安全安心の死守と活力ある強い日本のバランスをどう取っていくかが重要だと述べました。良い外国人材に来てもらうことの重要性を強調する一方で、安全安心の確保も必要条件だとしています。
しかし、このバランス論には注意が必要です。各政党、各議員によって考えるバランスポイントは大きく異なりますし、より多くの受け入れを志向する立場から、現状維持や規制強化を求める立場まで、幅広いスペクトラムが存在します。そもそもバランスがとれるのか?という問題もあります。この超党派議連がどのような結論を出すかは、今後の外国人政策に大きな影響を与える可能性があるので注視が必要です。
特定技能制度拡大と育成就労制度の本格始動
ホームタウン事業が撤回される一方で、外国人受け入れ拡大の大きな流れは継続しています。その中核となるのが特定技能制度の拡大と、新たに始まる育成就労制度です。令和6年3月29日の閣議決定では、令和6年4月から5年間の特定技能受け入れ見込数として82万人という数字が明示されました。これは従来の受け入れ規模を大幅に上回る数字であり、事実上の大規模外国人受け入れ政策と言えます。
育成就労制度は技能実習制度に代わる新たな枠組みとして設計されており、より多くの外国人労働者を受け入れやすい環境を整備することを目的としています。この制度により、特定技能への移行がより円滑になり、結果として長期滞在、永住への道筋がより明確になることが予想されます。
今後の展望と国民的議論の必要性
ホームタウン事業の撤回は、国民世論の力が政策に影響を与えた一例として評価できすが、これは氷山の一角に過ぎません。より大きな外国人受け入れ政策の枠組みは着実に進行しており、その影響は日本社会全体に及ぶことになります。
JICAや外務省による受け入れ環境整備、特定技能制度の大幅拡大、育成就労制度の本格始動など、複数の政策が同時並行で進められています。これらの政策が相互に連携し、事実上の大規模移民受け入れ体制を構築していく可能性が高いのです。
重要なのは、これらの政策が国民的な議論を十分に経ることなく、行政主導で進められていることです。移民問題は一度始まると後戻りが困難な政策領域であり、慎重な検討と国民の合意形成が不可欠であるにも拘わらず進められています。
今回のホームタウン事業撤回が示したように、国民の声は政策に影響を与える力を持っています。この週末にも、大阪など各地で移民反対デモが繰り広げられました。しかし、より根本的な政策転換を実現するためには、継続的な関心と監視、そして建設的な議論が必要です。
確かに、介護、医療、建設等様々な産業分野で人手不足が深刻化しており、背に腹は替えられない大問題だとは思います。しかし、移民問題はやがて確実に国を亡ぼすことに繋がるので、外国人労働者への依存、移民促進に頼らない方策、例えば、日本人従業員の賃金上げ、機械化・ロボット化等の推進、更に言えば我々国民が人手不足が招く不自由に甘んじる、サービスの低下を是とするしかないと思うのです。
まとめ
最近思うこと。日本人の多くが政府の言うこと、やることに不信感を持ちつつあるのではないかと。私もその一人です。政府の企図する(労働力不足を補うための)特定技能制度の大幅拡大や育成就労制度の本格始動は、確実に実質的な移民増加を招きます。それこそヨーロッパ諸国の二の舞です。移民(外国人)は居心地の良い空間、生きやすい空間、言葉の通じる空間を求め、次第にコミュニティを形成します。穏健なコミュニティならば許容できますが、不法滞在者の隠れ家となる治外法権のコミュニティ、警察権力さえも排除するコミュニティでは、必ず日本人と様々な衝突を引き起こします。やがて彼らは、帰化し、選挙権・被選挙権を得て議員や首長(政治家)になり、自分たちの都合の良い社会を作り始めます。まさに庇を貸して母屋を取られることに。だから、今、くい止めないと取り返しのつかないことになるのです。
参考:移民増加を招く特定技能制度と育成就労制度(比較)
| 項目 | 特定技能制度 | 育成就労制度 |
| 制度開始 | 2019年4月 | 2027年(技能実習制度を廃止して移行予定) |
| 目的 | 即戦力となる外国人材の受入(人手不足対策) | 人材育成+人材確保(技能実習の問題を是正) |
| 在留期間 | 1号:最長5年 2号:更新制限なし(事実上の永住可) | 最長3年(終了後、特定技能への移行可能) |
| 対象分野 | 12分野 → 2024年拡大で11分野が「2号」対象に | 特定技能と同じ分野を想定(接続が前提) |
| 家族帯同 | 1号:不可 2号:可 | 不可(育成期間中は単身が基本) |
| 受入要件 | 技能試験・日本語試験合格が必要 | 受入企業の管理体制が重要(試験なし) |
| 転籍(職場変更) | 原則可(ただし制約あり) | 一定条件で可能(技能実習より緩和) |
| 終了後の進路 | 1号から2号へ移行可能 → 永住も視野に | 特定技能へ移行可能 |
| 監督体制 | 出入国在留管理庁が監督、受入企業に基準 | 監理団体+政府が厳格に監督、不正企業は排除 |
| 背景 | 人手不足解消のため新設 | 技能実習制度(低賃金・人権侵害)の問題を解消 |
写真は、テーブルマウンテン頂上から眼下に望むケープタウンの大パノラマ(南アフリカ)





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