AIによる作戦立案ー陸自の戦術教育転換迫る!

国への思い
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 私は以前、陸上自衛隊富士学校で戦術教官を約2年間、幹部学校で戦略教官を約1年間務めた経験があります。戦術教育は将来指揮官や幕僚(指揮官を支えるスタッフ)となる幹部学生に対し、作戦計画立案のための手順や手法を教育するもので、簡単に言えば、論理的、合理的に最適な戦い方を案出するというものです。もう少し詳しく言うと、①戦いの土俵となる「地形」を詳細に分析し作戦への影響を明らかする、②戦いの相手となる「敵」の予想行動を見積り、その公算順位や作成遂行に及ぼす影響を明らかにする、そして③「我(自軍)」の編成・装備や兵站能力(補給・整備等後方支援能力)等に基づきシミュレーションを経て最適な戦い方を見出し、作戦計画に仕上げていくというものです。海空自がどのような戦術教育を行っているかまでは承知していませんが、少なくとも米軍は陸自と同じような教育を行い指揮官や幕僚を育てています。

 現実の作戦遂行に影響を与えるのは「地形」「敵」「我」だけはでなく、国内外の政治状況、同盟国(米軍)の動き、国内世論、防衛産業の稼働状況、住民避難の状況等、戦い方に影響を与える全ての要素を分析しなければなりませんが、初歩的な戦術教育では分析要素をシンプルにして、作戦計画立案のための手順や手法を教育しています。

 そこでAIの登場です。人間が何時間もかけて行う分析作業などはAIを活用すればあっという間です。いつかそうした時代が来るだろうと考えていましたが、とうとう来ました。

 先日、読売新聞に私の目を引いた記事が掲載されました。以下、紹介します。

自衛隊が前線の情報分析にAI活用へ…敵の写真や音声を自動解析し統合、配置の立案も

防衛装備庁は、AI(人工知能)を活用した自衛隊の情報分析システムの開発に乗り出す。AI開発に取り組む新興企業「サカナAI」(東京)に委託して2027年度まで研究を行い、将来的には陸上自衛隊に導入する方針だ。部隊内での情報伝達・分析の効率化を図るとともに、新興企業の優れた先端技術を防衛分野に生かす狙いがある。                                     新しいシステムでは、情報の伝達から統合・分析までAIを活用し、高速化・効率化を目指す。具体的には、前線にいる自衛官が携帯端末や無人機で撮影した敵の写真を基に、AIが位置や装備を自動的に解析し、文字データで司令部に送る。敵の情報を無線機から音声で伝える場合は、受信した音声をAIが文字データに自動変換する。各部署で集めた敵の情報は、AIが統合して司令部のパソコン上の地図などに表示する。味方の最適配置などもAIが立案し、司令官に提示することが可能だ。                                            新システムは端末内でもAIを動かすため、通信環境の影響を受けにくく、情報流出のリスクも低減できるという。稼働すれば、自衛官の省人化も期待される。国内企業の民生品を活用することで、技術基盤の育成やサプライチェーン(供給網)の 強靱(きょうじん) 化、コスト削減につなげる。(読売オンライン)

陸自の戦術教育も変わらねば時代に取り残されるーでも、心配!!

 先の記事内容は画期的なことですが、同時に科学技術の進歩から当然のことでもあります。こうした動きを受けて、陸自の幹部学校や各職種学校での戦術教育も当然に変わらなければなりません。また、『野外令』『野外幕僚勤務の参考』等の重要教範や各種職種運用教範も早急に改定が求められます。多分、米陸軍は既にAIに対応した戦術教育に転換していると思われます。

 旧帝国陸軍では、日米開戦から1年半後の1942年6月にミッドウェー海戦で旧帝国海軍が大敗し、これからは太平洋の島嶼防衛が重要になってくるという段階になっても、旧陸軍士官学校では、何と「対ソ連戦」を念頭においた教育がなされていました。主敵は米軍、戦場は太平洋と頭では理解していながら、時代の流れに追いついていけない旧帝国陸軍の体質を象徴するような事象ですが、陸自が轍を踏まないことを願うばかりです。

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