習近平は国家主席であり、中国共産党の主席でもあり、軍指導機関である中央軍事委員会の主席でもあります。特に中央軍事委員会は重要で、このポストに就くことにより政治だけでなく軍事の実権を掌握できます。一部の新聞だけしか報じていないようですが、中国国防省は24日に中央軍事委員会の高官2人が「重大な規律違反」により失脚したと公表しました。重大な規律違反とは汚職等のことですが、習近平はこれまで政敵や忠誠が怪しい側近などは、冤罪を含め、この口実で排除してきました。これは習近平自身及び側近が汚職には無縁の聖人君主であるという意味ではありません。自分の悪行は棚に上げ、要は権力闘争の手段として「重大な規律違反」という一見聞こえの良い口実で排除(=投獄、やがて死刑その他の極刑)してきたのです。
今回失脚した のは、反習近平派の張又侠 ・中央軍事委副主席(75)と統合参謀部参謀長の 劉振立 ・同委員(61)のトップ二人です。特に張又侠は人民解放軍制服組のトップで反習近平派の実力者でした。実は既に何衛東、苗華と李尚福といったメンバーが一昨年から昨年にかけて失脚させられていました。何衛東、苗華は習近平の側近でしたが、張又侠の工作により失脚させられ、その結果、中央軍事委員会は張又侠が実権を握り、習近平は窮地に陥っていました。制服組トップの張又侠は、習近平の台湾侵攻に反対していたと伝えられ、私はこれで台湾有事のリスクが下がって良かったと喜んでいました。
実は2024年の3中全会(中共の最高意思決定会議)以来、習近平派と反習近平派との対立(=習近平と張又侠の対立)が顕著になり、今回失脚した二人の高官は反習近平派の元老達に担がれて習近平打倒に動いた人物でした。しかし、最終的に習近平が中央軍事委員会における権力闘争に勝利したわけです。今回の粛清により、当初7人だった中央軍事委員会メンバーは、 習近平 主席と規律担当の張昇民(副主席)の事実上2人だけという異常事態となりました。張昇民は元々張又侠派でしたが、習近平に寝返ったようです。空席のポストはやがて習近平に忠誠を誓う人物によって埋められ、名実ともに習近平が中央軍事委員会を束ね、人民解放軍を掌握することになるでしょう。
この権力闘争は何を意味するか?というと、軍事の最高意思決定機関である中央軍事委員会が当面は機能不全になり、人民解放軍の指揮・運用に問題が生じることになります。それは、習近平の野望である台湾侵攻の危機が和らぐことを意味します。しかし、危機は少し遠のいただけであり、習近平の中央軍事委員会での足場固めが済めば、危機は再来します。ましてや来年2027年は、人民解放軍建軍100周年として、予てから台湾有事が起こりうるとされてきた年です。
トランプ大統領が昨年12月に「国家安全保障戦略(NSS)」発表し、その中で「アメリカは西半球における覇権を重視する」旨が謳われました。言い換えれば、東アジアや欧州の安全保障については経済的利益を除きあまり関心がないので、その地域の関係国が自助努力で安全保障に責任を持て!ということなのです。アメリカは昨年末に台湾に過去最大規模となる総額約111億ドル(約1兆7000億円)相当の武器売却を承認しましたが、それは経済的に儲かるからであり、台湾への政治的軍事的関心を強めた訳ではありません。そのことを我々日本人はしっかりと認識する必要があります。
明日は衆院選の公示日です。当面、政治家や国民の関心は選挙一色となります。でも高市首相があれこれ批判される中で、衆院解散を決心したのは、NSSから分かるようにアメリカは頼りにならないかもしれない!日本が抜本的に防衛力を整えなければ台湾有事に対応できない!そのためには安定した政権基盤が必要だ!時間があまりない!と考えたからだと私は見ています。
追記(1/28):XやYoutubeの渋谷司氏のチャンネル(中国情報を深堀しているチャンネル)では、①拘束された張又侠が配下の第82軍により解放され、②逆に習近平は身を隠している、③中部戦区の部隊が中心となって打倒習近平派のクーデターを起こしている等の解説が配信されています。これが事実なら台湾武力侵攻を企図する習近平の権力が削がれるので大変好ましいことだと思うが、さすがに、これらは事実無根、デマだと思います。現にイギリスのスターマー首相が北京訪問中であり習近平と会っています。習近平は、軍のトップである張又侠を拘束するにあたり、軍の反発も予測し万全の態勢で臨んだでしょうから、デマに惑わされず、強い関心をもって注視していくこととします。




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