米がベネズエラを攻撃 日本のとるべき立場

国への思い
U.S. President-elect Donald Trump speaks at his election night rally in Manhattan, New York, U.S., November 9, 2016. REUTERS/Carlo Allegri TPX IMAGES OF THE DAY

 年明け早々の3日未明(現地時間)に、アメリカ軍がベネズエラの大統領府を急襲し、マドロ大統領夫妻を捕捉、米国内で麻薬関連の罪を問うためにそのままニューヨークに移送しました。大統領夫妻は麻薬密輸に絡み既に米国で起訴されており、今月5日以降裁判にかけられ予定です。ちなみにトランプは、ベネズエラ経由の麻薬流入を「米国への武力行使」にあたると主張し、密輸組織と看做した船を攻撃してきた経緯があります。

 この事件はいろいろと考えさせてくれます。1つは、日本は外交上、トランプの軍事作戦を非難すべきかどうかということ。2つ目は、完璧な軍事作戦(一種の斬首作戦)はどのような準備に基づき実行されたのかということ。3つ目は、今後ベネズエラの政治体制はどのように変化するのか、石油利権は再び石油メジャーの手に戻るのかということです。

 自衛官出身で戦術教官を務めてきた私には、2つ目が大変興味深いのですが、今日は、外交上日本が取るべき立場について私の考えを述べたいと思います。

 今回の斬首作戦は、麻薬犯罪の撲滅、石油利権の奪取とか、その目的がいろいろと指摘されています。しかし、本音は①アメリカの裏庭に反米政権を作らせないベネズエラはチャベス前大統領の時から反米でアメリカの石油メジャーから利権を奪い国有化しました。次のマドロ大統領も反米姿勢を貫いていました)②中露の影響力を排除する(ベネズエラは反米だけでなく、中露と軍事的・経済的関係を強めていました)ということだと評価しています。大局的に捉えれば、「アメリカの安全保障のため」ということになります。昨年12月にトランプが発表した『国家安全保障戦略(NSS)』にも「西半球のアメリカ覇権の確立云々」が書いてありました。今回の作戦は、その準備に数ヶ月費やしたといいますので、当然、NSSもその準備と連動したものだったのでしょう。

 日本は、台湾有事を念頭に予てから「力による現状変更を許さない」と主張してきました。ロシアのウクライナ侵略もその脈絡で非難してきました。トランプの今作戦に対して、日本の多くのマスゴミや中露は、「主権国家を攻撃し、その大統領を拉致したことは、国連憲章にいう自衛権の範囲を逸脱しており、国連憲章違反だ!と一斉に非難しています(国連憲章は原則として他国への武力行使を禁じています。国連安全保障理事会の決議に基づく軍事行動や、武力攻撃を受けた国などが自衛権を行使することに限り例外的に認めています)。

 今回、トランプが「領土の占領を目的とした侵略」ではないものの、他国を攻撃し大統領を捕捉・拉致し、政治体制の転換を企図したことは、ある意味、「力による現状変更」だったので、日本としては、本来トランプを非難すべきです。そうしないと、これまでの外交方針との一貫性がなくなります。しかしアメリカは同盟国であり、安全保障上極めて重要な国なので非難することは適切ではありません。一種の板挟み状態ですが国益を重視して選択すべきです。

 結局、高市首相はトランプを非難せず、ベネズエラの民主化云々との声明を出し、その一方で小野寺安全保障調査会長に「トランプの「力による現状変更」が中共の台湾侵略にお墨付きを与えた形となり懸念している」といった趣旨の発言をさせてバランスを保ちました。大変賢明だと思います。

 私は、日本の安全保障を考えた場合、アメリカとの同盟関係に亀裂を生じさせることは大きく国益を損なうので絶対に避けるべきだと考えます。一方で中共に対しては台湾有事を回避するために「力による現状変更を許さない」と言い続ければよいと考えます。トランプの現状変更は認めるけれども、中露の現状変更は認めないのか?との誹りを受けようと、そんなことは些細なことです。

 ベネズエラ以上に大きな心配事があります。

 昨年12月に発表された『国家安全保障戦略(NSS)』では、「米国が世界秩序全体を支えてきた時代は終わった」と言い切り、南北米大陸を含む「西半球」を縄張りのように守る意思を示しました。またNSSでは米中を経済的に「ほぼ対等な関係」と表現しました。トランプは時折米中を「G2」と呼んでいます。この脈絡から言うと、東半球は習近平の縄張りとして認めるかのようです。

 NSSには台湾を巡る紛争を抑え込みたいとは書いてありますが、これも米国経済に重大な影響が及ぶからであり、中国との関係性は経済的な色合いが濃く、今年は米中首脳会談が4回開かれる可能性があると言われています。トランプが西半球ばかりに関心を向け、台湾に関心をもたなくなることは、台湾有事の蓋然性を高めることになり、大変憂慮すべきことだと思います。高市首相にはトランプの台湾への関与を繋ぎとめる外交努力をお願いしたいと思います。

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